坂口 美幸(サカグチ ミユキ)
理工学研究科 物質科学部門助教
工学部 応用化学科

研究者情報

■ 学位
  • 博士(理学), 兵庫県立大学
    2013年03月
■ 研究キーワード
  • 蛍光相関分光
  • 分光
  • 生物物理
■ 研究分野
  • 自然科学一般, 生物物理、化学物理、ソフトマターの物理
■ 学歴
  • 2013年03月, 兵庫県立大学, 生命理学研究科

業績情報

■ 論文
■ 共同研究・競争的資金等の研究課題
  • in-cell 高感度一分子構造ダイナミクス解析システムの開発               
    日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 基盤研究(C), 2022年04月01日 - 2025年03月31日
    坂口 美幸, 埼玉大学
    配分額(総額):4160000, 配分額(直接経費):3200000, 配分額(間接経費):960000
    本研究では,細胞内で生体高分子の構造ダイナミクス解析を可能にするin-cell一分子構造ダイナミクス解析システムの開発を行う.特に二次元蛍光寿命相関分光法を応用し,これまで検出が難しかったマイクロ秒領域の構造ダイナミクス解析を細胞中で行う.
    今年度は,細胞が常時供給できるよう培養設備や条件を整えた.また,蛍光色素を導入した細胞試料を調製して蛍光寿命相関分光測定を行い,装置の空間分解能や励起光強度など測定条件の最適化を行った.得られた色素蛍光の光子データは二次元蛍光寿命相関分光法により解析し,細胞内における色素の蛍光寿命を評価した.細胞内へ導入する生体高分子としては,DNA二重鎖形成機構を研究するモデル分子でマイクロ秒の構造ダイナミクスを示すヘアピンDNAを採用し,細胞への導入方法の検討を開始した.
    二重鎖形成機構はDNAの最も基本的な性質であるが,細胞内を模倣した分子混雑環境下でのダイナミクス解析の報告は多くない.特にマイクロ秒における解析はこれまで為されていなかった. そこで,in-cell計測で得られる結果の解釈を助けるために,in vitroで分子混雑環境を模倣したクラウダー存在下でのダイナミクス解析を行った.PEG8000をクラウダーとして用い,二次元蛍光寿命相関分光法にてダイナミクスを解析した結果,二重鎖形成の速度定数はクラウダー濃度20%で1.5倍になり,二重鎖構造が分子混雑環境でわずかに安定化されることが分かった.一方先行研究によると,秒の領域で起こるヘアピンDNAの二重鎖形成の速度定数は10% PEG8000で既に3倍に達している.これはクラウダーによる排除体積効果により二重鎖構造が安定化されることを示している.従って,本研究で観測するマイクロ秒の速いダイナミクスでは排除体積効果の影響が比較的弱いということが示唆された.
    課題番号:22K05018
  • 共鳴ラマン分光法によるチトクロムc酸化酵素のプロトンポンプ機構の解明               
    日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 特別研究員奨励費, 2011年 - 2012年
    坂口 美幸, 兵庫県立大学
    配分額(総額):1300000, 配分額(直接経費):1300000
    チトクロムc酸化酵素(CcO)はミトコンドリア呼吸鎖の末端酸化酵素であり、分子状酸素(O_2)の還元反応と共役したプロトンポンプを行う。CcOは、真核生物ではミトコンドリア内膜に、好気性細菌では細胞膜に存在し、膜を介した電気化学ポテンシャルを形成する事でATPの合成を駆動する。CcOの活性中心であるヘムaは、プロトンポンプの駆動部位として機能するが、共鳴ラマンスペクトルではヘムの振動モードを選択的に共鳴増大し、その構造情報を得る。本研究では、プロトンポンプと連動して構造変化すると推測されている、ヘムaの側鎖7位プロピオン酸基とヒドロキシファルネシルエチル基に由来する振動モードの帰属決定を行い、プロトンポンプに伴った構造変化を検出する事を目的とした。そして細菌CcOの変異型酵素を調製し、その共鳴ラマンスペクトルを解析する事で、364cm^<-1>と1251cm^<-1>にそれぞれ7位プロピオン酸基とヒドロキシファルネシルエチル基に由来する振動モードを帰属した。また、ヘムヨが駆動するプロトンポンプ機構は哺乳類(ウシ心筋)酵素において提案されているので、細菌CcOの帰属を基に、ウシ心筋CcOの共鳴ラマンスペクトルを解析し、7位プロピオン酸基とヒドロキシファルネシルエチル基に由来する振動モードを370cm^<-1>と1251cm^<-1>に帰属した。そして酵素反応追跡用人工心肺装置を用いて、CcOのO_2還元反応の時間分解共鳴ラマンスペクトルを測定した。この時間分解測定は条件検討の段階である。
    これまで、プロトンポンプに伴うヘムやタンパク質の構造変化が、実時間で検出された報告は無かった。
    本研究で帰属したヘムa側鎖の振動モードはプロトンポンプに伴う構造変化を反映するため、時間分解測定のマーカーバンドとしての利用が期待される点で意義があり、動的プロトンポンプ機構解明のための基礎を与える点で重要である。
    課題番号:11J07254
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